オキュペイショナルハイジニストの合格通知が届き、登録の申請手続きを開始しました。受験を意識してから合格までの体験をご披露したいと思います。
きっかけはR5,6年に法令が改正された「化学物質」に関して「化学物質管理専門家」となる要件を備えていることでした。これから私の体験をご披露していきます。
1.受験のきっかけ
2.試験概要と情報収集
3.学習スケジュール
4.試験本番の様子
5.合格後の感想と今後の展望
6.出題の傾向
1.受験のきっかけ
なぜオキュペイショナルハイジニスト資格を目指したのか?
ハイジニスト資格を意識しはじめたのが、R5,6年の「化学物質」の法令改正において示された「化学物質管理専門家」となる要件そのものだということでした。
ハイジニスト以外では労働衛生コンサルタントなどが該当しています。その際に要件となる労働衛生コンサルの試験区分は「衛生工学」であるということから、「保健衛生」で登録している私は対象外でした。
ハイジニストは93時間の学習(講義の受講)をすることが受験の要件であったことと、学習内容をサイトで確認したところ、広範囲でかつ専門性が高い内容のカリキュラムであったことから、日本作業環境測定協会に講習の申し込みをしました。
申し込みに際しては、協会の会員になることで割引が適用されることから、まず会員への申し込みをした次第です。受講料の割引は会費支払いを差し引いてもメリットが出ました。
学習の進捗とともに試験そのものの情報を得たかったのですが、受験対策の過去問集などはなく、またWebサイトで検索をしても受験関連情報はヒットしませんでしたから、いきなり本試験を受けて自らが知るほかは無いと思い、初回は受験対策勉強らしきものはせずに受験した次第でした。 初回は不合格。しかし、どのような出題がされるのかを把握するのに良い機会となり、2回目で合格することができました。試験の概要は次回のこの場でご紹介します。
2.試験の概要と情報収集
受験資格や申し込み方法は日本作業環境測定協会のサイトを見て確認することができますが、いわゆる理科系の経歴(学校)ではない方にも受験資格が拡大されており、オキュペイショナルハイジニストの裾野を広げようという思いが感じられます。
試験の受験前には合計93時間の講習(Webでの視聴)を行いました。私は安全衛生関係の講習講師をやっていますが、講習内容の専門性は高く、講習の「ネタ」に活用できるレベルで学びになることが非常に多くありました。
たとえば産業保健の領域で健康診断などは会社員時代の本業で携わっていましたが、健診の歴史的な背景から、特殊検診までの幅広さで、実務で得ていた知識を補強することができています。ほかにも保護具の専門知識から、環境の領域まで幅広く視聴して学ぶことができたといえます。
さて、試験対策という意味では前に書きましたように参考にした教材や情報源(書籍、Webサイト、講習会)はほぼ、皆無です。
このため、初回は「テキスト見直し、山かけ、その他」何もせずに試験会場に向かいました。
3.学習スケジュール
初回受験時は93時間分の動画視聴をしたにとどまりました。学習期間は半年程度であったと思います。動画の配信時期にあわせて少しずつ視聴をした期間になります。視聴は講座の順番で行う必要はなく、どこから始めても単元ごとに独立しているので講座開始時期を待つことなく、視聴できるところから開始しています。視聴を終了したあとに申告して届いた単位履修証明書が8月から1月にかけての日付でしたから、おおむね6か月です。
二回目は初回で把握した出題論点を意識しての学習をしました。マークシートの問題は正誤を「選ぶ」問題ですが、記述は「書ける」ようになっていなければなりません。
たとえば初回の問題で熱中症に関する出題があり、熱中症の対策について記述するような問題があり、対策のポイントをフレームで押さえるようにしました。フレームで押さえるというのは衛生の3管理などの観点から整理しています。ベースは講義の動画から整理し、具体的な事例(霧状の水を散布することで何度下がるとか)をメモに整理しています。初回の問題が2回目に再び出題されるかという点で、次回は熱中症ではなく、振動や騒音か?とも感じ、他の論点を整理するようにしました。
4.試験本番
初回・2回目の試験ともに試験当日は三田のNNホール。比較的小ぶりの会場であり、総勢50人も入らないサイズです。資格試験というと定番の参考書を広げている人が目につきますが、そもそも参考書籍が無いため、周囲の受験者の方はA4サイズの独自資料のようなものを見ている方が多かったように思います。
試験は以下の流れでした。
① マークシートⅠ(4肢択一)
② マークシートⅡ(4肢択一)
③ 記述式(4問から3問を選択)
マークシートはⅠ、Ⅱともに衛生管理者試験と同様の幅広い知識が問われるものです。
記述式に関しては化学物質のリスクアセスメントを含む、化学物質管理に関しての展開の仕方から、合格時には情報機器作業(旧VDT)に関する出題もあり、いずれもフレームを意識して整理しながら回答しました。
下書きをしてから整理するような時間は無かったので、何を、どのように書くかを箇条にしておいて、それを順次文書化していく方法で向き合いました。
5.合格後の感想と今後の展望
試験問題は全て提出しますので、自己採点がかないません。初回は「何点くらいとれたかな?」で発表を待ち、マークシートは得点できていたものの、記述が合格点の60点には数点不足する結果になりました。
二回目はマークシートも記述も無事に合格基準は超え、試験当日の手ごたえもある程度は感じていたものの、記述の採点は網羅性も高いのではないかと想像していたため、あと何回を受けたら合格するかと考えていたくらいです
ちなみに2回目の試験に限り受験料なし(再受験無料)で受けることができます。
私は10月期の試験で受かりましたが、次の4月も受験するだろうと考え、次回の試験日程について問い合わせし、その日程はブロックして他の予定を入れないようにしました。
10月の試験で翌年2月には合否が届くという説明でしたが、1月末にレターパックがポストにあり、何の気なしに中身をあけたところ、合格通知だったので、家の中で思わず叫んだくらいでした。
取得後のキャリアへの影響や変化はこれからであろうと思います。今は登録申請中です。申請に際しては卒業証明書や実務経験証明をそろえて提出。判定委員会での審査を受けてからになります。
実務経験証明は元の職場にコンタクトして入手しましたが、退職後も良好関係で時々連絡をしていたため、スムースでした。
これから目指す方と、自分自身の学びの振り返りのため、このあと少しずつ受験体験かたがた、どのような勉強をしてきて、どのような出題に役立ったかを整理したいと思います。
6.出題の傾向
はじめに、出題の傾向をここに記すことの是非についてです。資格試験は実務に際して必要最低限の理解を問うものです。各試験団体が過去問題を公表するのは、その内容を公開して受験者に準備のための学習をしていただくという点で共通しているのだと思います。
私が受験に際して向き合った問題をピックアップしていきたいと思います。
マークシートⅠでは以下のような問題が出ていました。
•安衛法・政省令について、たとえば法律と政省令はともに「国会で決める」(誤:法律のみ国会。政令は内閣、省令は各省大臣)
・特定化学物質は、第1、2、3類に分類され第3類が最も多い。
・ILO勧告は、加盟国が批准すると強制力が生じる。(勧告?、条約?4肢の中ではたぶん誤り)
・個人ばく露測定の基準(8時間を基準としたとき、ずっとポンプを動かすか)
・TLV-TWAとSTELの違い
・化学物質の毒性を調べるエームス試験(変異原性試験)など
・物質ごとに生じる疾病。たとえばノルマルヘキサン-末梢神経障害などの組み合わせ正誤
・LOAEL,LOAL,NOAEL・・・
・WBGTいわゆる熱中症指数の算出計算式(を覚えているか)
・マイクロ波や赤外線、紫外線・・・波長の長い順は?
これらは第一種衛生管理者試験の延長で作問がなされているとみました。
同試験の受験対策を講習会で行っていますと、過去問の傾向が似ているのです。WBGTやマイクロ波の問題は衛生管理者と論点が全く同一です。
つまり、マークシートの攻略上で最低限必要なのは、第一種衛生管理者と衛生工学衛生管理者の知識情報は必須として押さえておかねばならないといえます。
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次に記述式です。これは4問から3問を選択して解答します。
以下は私が初回で落ちたときのものなので、起死回生、次回のために覚えていたメモから抜粋しています。
問1.化学物質取扱作業のリスク評価について記述する問題で、(1)は100字、(2)は600~800字の制限
(1)ばく露限界値とは(定義)
(2)ばく露限界値をどう設定するのかの方法
問2 は従業員数300名程度機械製造の事業場で、化学物質を10種類ほど使用しているが従業員に休業災害(薬傷)が発生したので、リスクアセスメントを行うこととなった。その進め方をどうするかというケース問題。
RAの手順とその優先順位を述べる問題
問3 バイオロジカルモニタリングの問題
呼吸域の濃度の把握と比較して、バイオロジカルモニタリングの利点は何か
バイオロジカルモニタリングの注意点は何か。
問4 熱中症について衛生3管理+教育の観点で具体的な予防の方策を述べる。
以上の問題が出題されていました。